事故が起こってはせっかくのトレイルランニングが台無し。自然のリスクに備えたリスクマネジメントの発想を!

素晴らしい眺め、静かな自然、トレイルランニングには多くの魅力があります。

しかし、クスリに副作用の危険が伴うように、自然の持つ魅力はリスクと表裏です。里山のハイキング道でも事故は発生します。最近はトレラン中の遭難も増えています。レース参加時にも、トラブルは生じます。


【目次】

● 自然の中のリスクにはどんなものが?
● リスクに備える用具と装備
● 備えるべき知識・スキル
● 環境やトレイルを共有する他者への配慮も忘れずに・・・



自然の中のリスクにはどんなものが?

トレイルランナーも遭遇する山の危険として、以下のようなものがあります。示した対処法は一例です。

 

道迷い

多くは低山で発生し、時には滑落・転落など重大な事故につながります。

  • 地図・コンパスを持ち、普段から使い方を練習しましょう。レースでは、誘導テープを間違いなくたどることも技術の一つ。目線をあげてしっかり確認しましょう。テープがしばらく見当たらない、周りの人がいなくなった。コースを外している可能性があります。必ず、元来た道を戻りましょう。
  • コース図を見て、どんな場所を走るかを予め把握することも、道迷い防止に有効です。コース図をよく見ればペース配分にも役立ちます。GPS付きの時計やスマホをお持ちの方は、それを有効に使うことも遭難を防ぎます。

滑落・転落

急斜面から落ちることで、重大な事故につながります。

  • 周囲の地形に十分注意。危険箇所の見極めとスピードの調節を心がけましょう。

転倒

不整地の路面や岩場で発生しやすく、捻挫・骨折といった意外な重傷になることも。動けなくなれば、低体温その他のトラブルにも進行します。

  • 不整地での走りを練習しましょう。足首を捻りやすい人は、テーピングによる保護も有効です。

疲労・病気

高齢者では心不全などのトラブルが発生することもあります。

  • 無理のないコース選択・スピードを心がけましょう。レースでもマイペースで!

熱中症・低体温症

気温や湿度が高い時には、熱中症が、逆に気温が体温より低ければ、夏でも低体温症が発生します。

  • 熱中症には十分な水分補給。低体温症には防寒具と日頃から十分なカロリー摂取を。レースでも最低限の防寒着(最近は薄くて軽いアウトドア用の防寒着も売られています)か、サバイバルシートを持つと、リタイア時にも安心です。

悪天候

山の悪天候は命をも脅かします。雷はもちろん、雨も低体温、滑落など様々な派生的リスクを生み出します。

  • 天気の変化を常に意識するとともに、十分な装備を持ちましょう。

その他

場所によっては動物・虫の襲撃、のリスクもあります。熊は毎年数人のけが、ハチは10人を越える死者を出しています。特に中高年で要注意。

 


リスクに備える用具と装備

ただし道具は万能ではありません!スキルと知恵があってこその道具。

 

ウェアリング

一例

  • 防寒具:暖かい季節ならある程度の保温が可能な軽いウィンドシェルが便利です。寒い時期なら雨具と兼用もよいでしょう。
  • 雨具:半日以上の行程なら、天気がよくても雨具(防水素材のもの)を携帯します。
  • 靴:岩の多い場所や滑りやすい場所でも対応できるトレランシューズを利用します。不整地や岩地を走るので、アッパーの強度が十分なものをお勧めします。
  • ザック:体にフィットし、容量の小さ目のトレラン用ザックが便利です。

水、食料

トレランでは1時間体重1kgあたり8-10mlの水、エネルギーは同様に8-10kcalが必要だとされています。十分な水・食料に加え、常に非常用の水・食料を携帯します。

 

地図・コンパス

地図・コンパスを携帯し、道迷いを防ぐとともに、エスケープルートを常に確保しましょう。

 

セルフレスキュー用品

サバイバルブランケット(防寒)、ヘッドライト(照明)、湿潤ばんそこ・テーピングを持って、トラブルに備えましょう。

 



備えるべき知識・スキル

装備とスキルの両方で、初めて安全が守れます。

 

自然環境への理解

標高による気温の低下、天候の変わりやすさ、救助活動時の困難など、自然環境の特性を理解し、常に対応力の習得に努めましょう。

 

体力・ランニングスキル

行程に対応できる体力、ランニングスキルを身につけましょう。ぎりぎりで走りきるのではなく、余裕を持って走りきれる行程の計画が肝心です。

 

読図・ナヴィゲーション力

地形が分かるレベルの読図力と、道に迷わないためのナヴィゲーションスキルを身につけましょう。

 

救急法

捻挫対応のテーピングをマスターしましょう。そのほかにも止血、救命救急、搬送法、効果的な救助要請の方法など、いざという時慌てない救急法を身につけると安心です。

 

リスクに備えるには

トラブルを想定し、起こった時どうするか常に考えましょう。マニュアルや知識によって計画的に対応とともに、その場での臨機応変な対応が必要です。

  1. 周囲の状況の変化に敏感になること
  2. その先の最悪の出来事を想定すること
  3. 自分で対応可能かどうかを判断すること
  4. が臨機応変な対応を可能にしてくれます。

 

また、練習では極力2人以上のグループで出かけるようにしましょう。いざという時あなたを助けてくれるのがパートナーです。

リスクへ備えることは、危険を防ぐだけでなく、あなたのトレイルランニングをより楽しいものにしてくれます。


環境やトレイルを共有する他者への配慮も忘れずに・・・

ごみ捨て厳禁はもちろん、トレイルをはみ出し、路傍の草を不用意に踏むのを避けましょう。

 

他の活動者にあったら、安全で礼儀正しい追い抜き・すれ違いを心がけましょう。

  • 少し前からスピードを落とす。
  • 脇を通過するときには歩く
  • 自分が谷側を通過。挨拶も忘れずに。
  • 斜面では登り優先と言われていますが、臨機応変に。ただし上にいる人が動くと、落石の危険があることも意識しましょう。

本内容は村越の個人的見解ですが、山岳遭難統計や運動生理学研究者の山本正嘉さんの研究を参考にしました。

自然の中では、自分の身は自分で守ることが求められます。

備えるべき力・スキルに自信のない人は、必ず熟練者とともにトレイルに出かけましょう。

制作:NPO法人M-nop(著作権者:村越真)。内容についてのお問い合わせはnavi@m-nop.comまで。