事故が起こってはせっかくのトレイルランニングが台無し。自然のリスクに備えたリスクマネジメントの発想を!

 素晴らしい眺めや静かな自然、完走した達成感。トレイルランニングには多くの魅力があります。

しかし、クスリに副作用の危険が伴うように、自然の持つ魅力はリスクと表裏です。

レース参加時にも、トラブルは生じます。リスクに備えられてこそ、自由自在に自然とレースを楽しむことができます。

レース当日への心構え、備えをまとめました。なお、事前の準備や装備についての詳しい情報は(初心者~初級者編)をご覧ください。


事前にしておくこと

【自然の中のリスクを把握する】

レースで出会う危険を予め把握し、対応を考えてみましょう。以下の危険を見る前に、レースでどんな危険に出会うか考えてみると、よいイメージトレーニングとなります。

 

道迷い

誘導路のついたレースでも、道迷いは発生しています。目線をあげてしっかりテープ誘導を確認しながら走りましょう。テープがしばらく見当たらない、周りの人がいなくなったとしたら、コースを外している可能性があります。必ず、元来た道を戻りましょう。

予めコース図を見て、コースを把握することも、道迷い防止に有効です。登りが続くはずなのに下っていれば、コースを外したことが分かります。事前にコース図を見ればペース配分にも役立ちます。GPS付きの時計やスマホをお持ちの方は、それを有効に使うことも道迷いからの復帰を助けます。

転倒

捻挫・骨折といった意外な重傷になることもあります。足首を捻りやすい人は、テーピングによる保護も有効です。転倒しやすい下りでは、ゆとりを持って走りましょう。

疲労・病気

前半のオーバーペースが疲労・リタイアにつながります。あくまでマイペースで。「かなりきつい」と感じたらオーバーベースです。48時間前までのカロリー摂取が不十分だと、ハンガーノック(いわゆる飯ばて)になることもあります。前日ではなく、木金曜日にしっかりカロリー摂取をしましょう。

熱中症・低体温症

気温や湿度が高い時には熱中症が、逆に気温が体温より低く雨などが降っていれば初秋でも低体温症が発生します。熱中症には前日からの十分な水分補給を。低体温症には防寒具と日頃から十分なカロリー摂取を。

悪天候

レースは雨天でも実施されます。雨の場合低体温、転倒・滑落のリスクが高まるなど、好天時よりもリスクは高まります。天気予報に注意して、十分な装備で走りましょう。

その他

滑落や転倒、場所によっては、ハチの襲撃などのリスクがあります。周囲の地形や状況に常に注意を払い、危険箇所の見極めとスピードの調節を心がけましょう。周囲の状況に敏感になることは、けがを防ぐ上でも役立ちます。

 

【コースを知る】

プログラムのコース図から、地形を読み取ってみましょう。地図が読めるようになると、こうした特徴も自分で読み取れ、ペース配分にも役立ちます。

 

【リスクに備える用具と装備】

ただし道具は万能ではありません!スキルと知恵があってこその道具。

レースでは水や行動食が提供されます。しかし、その場所は限られています。早い人でも30分以上、3時間程度での完走を目指す人では、1時間以上エイドに出会わないこともあります。常に、自分で最低限のトラブルに対応できる。そんな意識を持って装備を持つことが安心につながります。

 

ウェアリング(一例)

暑ければハーフタイツに半袖Tシャツ、寒い・天気が悪い場合にはロングタイツと長袖Tシャツなど、天気と気温に併せてウェアを調整します。トレランではロードよりトラブルが起こりがち。その時にも救助が来るまで耐えられる装備が必要です。レースでも最低限の防寒着(最近は薄くて軽いアウトドア用の防寒着も売られています)か、サバイバルシートを持ちましょう。リタイア時にも安心です。雨天の場合、レース後半に身体が冷えることもあります。ゴアテックス等防水透湿素材の雨具を携帯しましょう。

靴:岩の多い場所や滑りやすい場所でも対応できるトレランシューズを利用します。不整地を走るので、アッパーの強度が十分なものをお勧めします。

ザック:体にフィットし、容量の小さ目のトレラン用ザックが便利です。

水、食料

トレランでは1時間体重1kgあたり8-10mlの水、エネルギーは同様に8-10kcalが必要だとされています。3時間以上かかる予定の方は、1時間以上エイドがないことを踏まえ、最低500mlの水分と500kcal程度(バーやジェル2個程度)を持つと、安心です。

地図

地図を持つとコース上の位置が分かり、ペース配分にも利用できます。コンパスも持つと、道迷い対応にもなります。

セルフレスキュー用品

サバイバルブランケット(防寒)、湿潤ばんそこ・テーピングを持って、トラブルに備えましょう。

 

レース中の注意

周囲の状況の変化に敏感になること、②その先の最悪の出来事を想定すること、③自分で対応可能かどうかを判断すること、が臨機応変な対応を可能にしてくれます。

誘導テープは見えているか?路面に危険はないか、コース周囲に危険な斜面はないか?脇の斜面からの落石はないか?気分が悪くなったり、いつもと極端に違う不調感や脚の違和感はないか?状況への敏感さが、トラブルを最小限にしてくれます。それは、危険を防ぐだけでなく、あなたのトレイルランニングをより楽しいものにしてくれます。

 

環境やトレイルを共有する他者への配慮も忘れずに

ごみ捨て厳禁はもちろん、トレイルをはみ出し、路傍の草を不用意に踏むのを避けましょう。

他の活動者にあったら、安全で礼儀正しい追い抜き・すれ違いを心がけましょう。

・少し前からスピードを落とす。

・脇を通過するときには歩く

・自分が谷側を通過。挨拶も忘れずに。

・斜面では登り優先と言われていますが、臨機応変に。ただし上にいる人が動くと、落石の危険があることも意識しましょう。

 


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